Q1機能紹介:映像と音の“記憶”をかたちにする
Viduの新機能「Q1」を初めて使ったとき、一番驚いたのは、映像の雰囲気や奥行きが格段に豊かになっていたことです。これまでにも感じていた“イラストの一貫性の高さ”はそのままに、画面に奥行きや光のニュアンスが加わったことで、映像全体に映画的な雰囲気が生まれていました。
その一方で、シーンによってはやや3D寄りの質感が強く出ることもあり、イラストの持つ柔らかさや余白感が薄まってしまう場面も少し感じました。ただ、それも演出や編集で調整可能な範囲で、作品全体としては“AIっぽさ”を超えた空気感に仕上がったと思います。
また、AI Sound Effects 機能の進化も非常に印象的でした。特にQ1では、複数の効果音をレイヤー構造で重ねられるようになっており、0〜10秒の間でそれぞれのタイミングを細かく指定できる仕様に。これにより、シーンの流れや感情に沿って音の入り方を繊細に設計することが可能になっています。
テストベータ版の段階では、日本語・英語ともにプロンプトの効きが悪く、この動画の制作時にはかなり試行錯誤を重ねて効果音を生成しました。生成された音声をそのまま使ったものもありますが、多くは切り貼り、ピッチ変更、速度調整などを行って、シーンに合う形に編集しています。
その後リリースされたバージョンでは、精度が改善されたと感じました。特に、公式が推奨していた英語でのプロンプト入力では効果が顕著で、ベータ版で苦戦していた“足音”の生成も、シンプルな英語プロンプトだけでアニメーションに馴染む音声がスムーズに作れるようになりました。

制作プロセスと、物語が“生まれてしまった”瞬間
この作品『名前のない音 / The Nameless Sound』は、もともと架空のアニメのオープニングをつくるつもりで始めたプロジェクトでした。最初はサイバーパンクファンタジーのようなテイストを考えていたのですが、制作を進めるうちに、次第に「記憶」というテーマに惹かれていきました。
はじめから構成を決めていたわけではなく、映像を作りながら、物語が自然に生まれていったというのが正直なところです。プロンプトの一行が、あるキャラクターの感情を想起させたり、あるシーンの光の揺れが「これはきっと誰かの記憶だ」と思わせたり。自分でも想定していなかったけれど、確かにこの物語に“たどり着いた”という感覚があります。
主人公のライラは、「触れることで他人の記憶を感じ取れる少女」。しかし、彼女自身に関する記憶はこの街には一切存在しない。その設定が生まれたとき、「記録ではなく記憶に残るもの」を目指すという作品の核が、はっきりと輪郭を持ちはじめました。
ChatGPTとのやり取りは、まさに共作のような感覚でした。設定の言語化、キャラクターの内面の掘り下げ、タイトル、セリフ、詩的な表現、SNSでの紹介文まで──対話を通して少しずつ作品の輪郭が定まっていきました。
実際の映像構成や編集は、自分のフィーリングを信じて進めた部分が大きいです。構成案や時間配分のシートはありましたが、それを“正解”とせず、そのとき映像から受け取った感情に従って調整しています。だからこそ、編集作業もまた創作の一部であり、物語を見つけていくプロセスそのものでした。
